




「苦情とクレームの違いがよくわからないので教えてください。」
こういった疑問に答えます。
本記事の内容は以下の通り。
・苦情の定義
・苦情とクレームの違い(不満・苦情・クレームの関係)
・苦情・クレーム対応
この記事を書いている私は、製造業の技術職で、10年以上QCサークル活動に参加し、QCサークル活動の推進者としても長年携わってきました。
過去の自分を振り返ると、苦情とクレームを同じ意味だと思い込んでいました。苦情とクレームの意味は違い、対応の緊急度や状況の深刻さも変わります。
本記事では、新入社員向けに苦情とクレームの違いを説明していきます。
内容は、日本品質管理学会の日本の品質を論ずるための品質管理用語Part2を参考にさせていただいておりますので、あらかじめご了承ください。
苦情とは【定義】


まず、日本品質管理学会による「苦情」の定義は以下の通りです。
「顧客及びその他の利害関係者が、製品・サービス又は組織の活動が自分のニーズに一致していないことに対してもつ不満のうち、供給者又は供給者に影響を及ぼすことのできる第三者へ表明したもの。」
製品を買った顧客が、製造元の企業や、その企業に影響を与える消費者団体や監督機関に不満を伝えることが苦情(Complaint)です。
では、ここでいう不満とは何かというと、顧客のニーズや期待を満たしていないということです。例えば、製品規格の不一致や製品の故障、アフターサービスの悪さなどが挙げられます。
このような不満を表に出して、供給企業に直接あるいは第三者を経由して間接的に伝えることが苦情です。
苦情とクレームの違い


では苦情とクレームの違いは何でしょうか。それは、具体的な請求のありなしです。
クレームとは、不満の表明である苦情に補償請求が加わったものです。補償請求とは、損害賠償や商品の交換、返金、解約などが挙げられます。
損害賠償となるとクレームを受けた会社は大きな損失となります。このように、苦情とクレームは同一ではありません。
イメージとしては、不満の大枠のなかに、苦情のゾーンがあり、さらにその苦情のゾーンのなかにクレームがあるような構造です。顧客からの苦情の対応を間違えると、クレームに繋がる可能性もあります。
クレームを避けるには顧客の苦情や不満に対しても日ごろから目を向けて、適切に対応する必要があります。
苦情・クレーム対応
正論
苦情・クレームを受けたら、対処が必要です。対処をしなければ、信頼を失います。そのため、顧客の不満を聞き、事実から原因を突き止め、対策を打ち、再発防止に努めます。
と、ここまではただの正論ですが、現実はそんなに簡単ではありません。
明らかに商品・サービスを提供する企業側にあればシンプルですが、実際はグレーなものもが多いため、苦情・クレーム処理は単純ではありません。
お客様は神様?
例えば、顧客で商品を問題なく使っていたものの、顧客の商品の使い方や品質要求が徐々に変わっていくことで、問題が発生し、不満・クレームを要求されるパターンがあります。
供給企業からすれば、事前に連絡もなく顧客が勝手に変更して、そんなこと知らんと言いたくなります。
これらの不満・クレーム対応は、扱う商品・サービスの種類や業界、顧客との関係によって変わるので、一概にこうすべきという答えはありません。
ただし、「お客様は神様だ!」と言って、グレーな問題に対して何でも顧客の言いなりになって、補償していてはビジネスになりません。
また、仮に商品・サービスの供給企業に原因がなかった場合には、問題が再発し、そのたびに補償請求を受ける負の連鎖に陥ります。
単に顧客に謝って補償し、改善すればよいというわけではないのです。苦情・クレーム処理には戦略が必要です。
顧客の不満/新しい要求品質を商品開発につなげる
一方で、提供した商品の顧客の不満・困りごとに対して、商品自体に問題がなかったとしても、それらはある程度は受け止めるべきです。
それらの不満や困りごとの情報、つまり新しい要求品質を次の商品開発に活かすことができます。
このように苦情・クレーム処理は、継続的な会社の利益を守るうえで非常に重要な対応と言えます。
まとめ
苦情の定義とクレームの違い、さらに苦情・クレーム対応について解説しました。苦情とは顧客が不満を表明したもので、さらにこれに補償が加わるとクレームとなります。
苦情・クレームの対応は継続的な会社の利益を守るうえで重要であり状況に合わせた適切な対応が求められます。
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