「FMEAとFTAの違いを教えてください」
「FMEAって何ですか?難しそうな印象です」
こういった疑問に答えます。
本記事の内容は以下の通り。
・FMEA(故障モード解析)とは?
・FMEAはやる意味ない?【FMEAの欠点】
・FTA(故障の木解析)とは?
・FMEAとFTAの違いとは?
この記事を書いている私は、製造業のエンジニアとして10年近く携わり、開発や品質保証、さらに製造スタッフなどを幅広い経験をしてきました。
FMEAやFTAを始めて聞いた人は、高度な手法のように感じて、とっつきにくい印象をもっているのではないでしょうか。
実際はそんなことなく、いたって単純な考え方のトラブル予測ツールです。
本記事では、難しい内容は省いて、初心者にFMEAやFTAのイメージがわくように解説していきます。
FMEA(故障モード解析)とは?
FMATの意味と目的
FMEA (Failure Mode and Effects Analysis:故障モード解析)は、製品や工程の構成要素に故障が発生すると予想し、その故障が発生する原因と、どのような影響が起こるかを事前に評価・解析する手法です。
さらに、故障が発生する頻度、影響度、検出難易度による指標で点数付けをして対応の優先順位を決めます。
そして、優先順位の高いものにたいして対策を打つことで、トラブル(故障)を未然に防止することができるのです。
設計FMEA/工程FMEA
FMEAは製品や工程のどちらにも適用できます。
製品の場合は、製品を構成要素に分けてFMEAを行います。これは設計FMEAと呼ばれます。
また、製造工程にたいしても、工程を細かく分けて、FMEAを行います。これは工程FMEAと呼ばれます。
どちらも、製品や工程の構成要素を細かく分けて、それらの望ましくない事象が起こった場合に、どのような原因か、どのような影響があるのかを予測します。
このように、FMEAは、製品や工程の構成要素の故障モードから最終的な影響を予測するので、ボトムアップ方式の解析方法と言えます。
FMEAはいつやるのか?
FMEAは主に、設計開発の段階で繰り返し行います。
特に、設計開発の初期からFMEAを実施することで、早期に問題点を抽出し、改善策を打ち設計変更をすることで、コスト低減への効果が期待されます。
さらに、量産前の段階から、品質管理や検査、製造工程の重点を置くべき管理ポイントを明確にすることができます。
このように、FMEAを設計開発の初期の段階から行うことで様々なメリットが得られます。
FMEAは意味ない?【FMEAの欠点】
さて、ここまでFMEAの使い方やメリットなどを説明してきましたが、実際の業務で本当に使えるのでしょうか。
実は、FMEAの欠点を理解していないと、FMEAはほぼ意味のない使えないツールになります。
まず、FMEAという解析ツールを使う仮定・前提条件は以下のとおり。
故障モードが独立していること
つまり、ある故障モードAと故障モードBの関係性については検討できません。
より正確に言うならば、複数の故障モード間の関係性をFMEAでは効果的に表現できないということです。
JIS C 5750には「FMEAは小さなシステム、モジュール又は組み立てに適している」と記載されています。
これって、割と致命的な問題です。
確かに、単純なシステムや組み立てには使えるかもしれませんが、逆にそんな単純なものにFMEAを実施する意味はほぼありません。
FMEAを適用する案件は、より難易度が高い製品で、トラブルを未然に防ぎたいからやるわけです。
これでは、机上の空論状態で、現実には使えないという烙印を押されかねません。
FMEAはいらないのか?
かなり酷評してきましたが、だからと言ってFMEAは全く不要かと言え割れればそうではありません。
FMEAのメリットは3つあります。
・トラブル未然防止によるコスト低減効果
・技術の蓄積
・共有化
このあたりです。
特に、二つ目は、FMEAを残すことによって、多少なりとも技術が蓄積され、後輩たちに技術継承をすることができます。
新規開発品の場合には、扱う製品の設計によっては、過去の設計FMEAや工程FMEAをベースに考えることができます。
そうすれば、過去に検討した故障モードを漏れなく入れて、それをブラッシュアップできます。
そうすれば、徐々に使える・信頼できるFMEAのベースができるでしょう。
それは、技術の蓄積に繋がります。
また、三つ目の共有化についても、関係者に故障モードとその影響を検討した結果を伝える場合、FMEAは役立ちます。
なにも伝える資料なく、検討しました!と説明しても誰も信じません。
検討したアウトプットとしてFMEAにまとめるのが良いでしょう。
FMEAの欠点を埋めるには?【FTA(故障の木解析)】
先に説明したFMEAの欠点を埋めるための補足的なツールとして、FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)があります。
FTAとは?
FTAとは、信頼性または安全性上、その発生が好ましくない事象を取り上げて、その事象の発生原因や発生頻度を推定するときに用いられます。
事象の要因間は、その関係性をANDゲートやORゲートなどの論理記号を用いてツリー状に展開します。
言ってみれば、好ましくない事象をロジックツリーのトップにおいて、その下を階層ごとに論理記号でつなぎあわせた展開図といったところです。
このように、FTAはトップダウン的な解析であり、FMEAが対応できない故障モード間の相互依存性をモデル化することができます。
FMEAとFTAの違い
FMEAは、製品や工程の構成要素から最終的な影響を推定するボトムアップ的な解析に対して、FTAは最終的な好ましくない事象から発生原因まで深堀していくトップダウン的な解析です。
このように、解析のスタートとゴールが真逆の関係となっているのです。
FTAを設計段階の初期に実施することで、構成要素レベルで必要となる要求を明確化するのに役立ち、FMEAの欠点を補うことができます。
よって、設計開発において、トラブルの未然防止のためには、FMEAとFTAを組みあわせて実施することが望ましいと言えます。
まとめ
FMEAの概要とFMEAとFTAの違いについて解説しました。FMEAとFTAはトラブルの予測ツールです。
2つのツールの違いを理解して、設計開発の初期の段階からこれらを使い分け、トラブル予測を実施し、改善策を打つことで未然防止につなげましょう。
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