「 QCストーリーの問題解決型の現状把握の進め方が知りたい」
「要因解析に進んでも、現状把握に逆戻りして再調査をすることが多い」
こういった疑問に答えます。
■本記事の内容
・QCスト-リー現状把握とは
・現状把握の進め方
この記事を書いている私は、製造メーカーの技術職であり、約10年間QCサークルのメンバーとして活動しています。
QC活動の理想と現実のギャップ、さらに運用面の難しさについてはよく理解しており、実際の活動に役立つ情報を提供していきます。
QCストーリーの現状把握とは【問題解決型】
現状把握の目的
問題解決型QCストーリーの現状把握の目的は、テーマの困りごとについて、3現主義(現場・現物・現実)に基づき調査・深堀をすることで、何が一番の問題なのか、問題を明確化することです。
まず、この目的をおさえましょう。
現状把握のポイント
現状把握のポイントは、テーマの困りごと(問題)を明確にして、それを見失わないことです。
テーマの困りごとを具体化して明確にすることは、テーマ選定のステップでやるべき内容です。しかし、これができていないグループが多いです。
テーマ選定の解説はこちらの記事を参考にしてください。
テーマの困りごとが曖昧だと、何について現状把握をすればよいのか、わかっているようで、わかっていない状態で調査を進めることになります。
とりあえず、調査しよう的な感じでデータ集めをするパターンです。
その結果、片っ端からデータを集めたり、必要なデータが取れていなかったりと、不要なデータまで集めたり、後戻りの追加調査が必要になったりと、大幅な時間のロスにつながる可能性があります。
現状把握を進める際には一呼吸おいて立ち止まり、
「そもそも、このテーマの困りごとってなんだっけ?」
「何を目的としてこのデータを集めるんだっけ?」
と問いかけるようにしてください。
そして、それが不明確であれば、テーマの困りごとを具体化・明確化するようにしてください。
「え?、現状把握のポイントじゃなくてテーマ選定のポイントじゃん」と言われるでしょうが、まぁ…その通りです…
ただし、そもそも現状把握をする対象の前提が崩れるとお話しにならないので、あえて挙げました。
次の項目で説明しますが、データ集め・層別・グラフ化などは普段の業務でやっていることなので、そこまで困っていないのではないでしょうか。
それよりも、普段の業務でやりなれていない問題の設定や課題の明確化のほうが、簡単そうで難しいのではないかと思います。
多くのグループがその失敗を引きずり、現状把握で躓いていると私は考えています。
ですので、現状把握のポイントとして、テーマの困りごと(問題)を明確にして、それを見失わないことが大事だと長々と説明させていただきました。
この「問題の明確化」と「現状を把握する」ことがいかに重要かについては、書籍「トヨタ仕事の基本大全」でも解説されています。
さらに理解を深めたい人は、「トヨタ仕事の基本大全」の第四章「問題解決力」を読んでみて下さい。読書嫌いでお金も使いたくない人は、Amazon audibleに本書があるので、Amazon audibleの無料体験でタダでどうぞ。
QCストーリー現状把握の進め方
では現状把握の進め方について、手順を解説していきます。
事実を集める
困りごと(問題)について、以下の観点で事実を集めると良いです。
まずは、事実を集める基本として、3現主義のスタンスで情報を集めます。つまり感・コツ・経験による憶測で物事を考えるのはダメだということです。
次に、問題について着目するポイントは4M,5M,7Mです。
問題の時系列の変化や作業者による違い、作業方法など、多方面から問題をとらえます。
さらに、そこで問題の発生状況に特徴的な変化が見られた場合には、それを5W1Hの形式で表すことで、その状態を明確化します(問題の悪さ加減の明確化)。
●データ集めの観点
・3現主義
現場, 現物, 現実
・4M(7M+E+T)
Man, Machine, Method, Material
Measurement, Management, Morale
Environment
Time
・5W1H
What, When, Where, Who, Why, How
ここで余談ですが、上記の観点を知っていても、そもそもデータのとり方に落とし穴があることが多いです。
要は、データの背景や意味合いを理解せずにデータ集めをすることは危険ってことです。
私も何度も失敗しました。
まぁ大丈夫だろうと思ってデータの背景を知らずに解析してみても結局使えないデータであることが後に判明して後悔したことが何度もあります。
最近は、データを集める前に、それって本当に意味があるのかを詳しい人や上司に確認するようにしています。
ですので、困りごとの背景を十分に理解している人やデータ解析・統計学を理解している人のサポートを受けながら進めていくことをお勧めします。
データを集めるときには、QC7道具の一つ、「チェックシート」の活用を考えると思います。チェックシートのポイントや作り方については、別の記事で解説していますので、興味のある方は、こちらの記事をご覧ください。
データを層別する
データが集まったら層別します。
層別とは分類と同じ意味で、同類のデータをまとめ、全体を幾つかの集まりに区分することです。
層別の切り口の例としては以下があります。
・時間別
・場所別
・作業員別
・機械別
・原料別
層別についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
次に、グラフを使ってデータを可視化します。
グラフ化で数値の羅列だったデータの関係を見やすくすることができます。
解析の目的に合わせて適切なグラフを選択してください。
例えば、代表的なグラフは以下の通りです。
・数量の大小を比較:棒グラフ
・時間的な変化:折れ線グラフ
・構成比率:円グラフ
・複数の項目の順位や頻度・累積割合:パレート図
・各区間のデータ頻度:ヒストグラム
このように、データを層別して、グラフ化することで、データのばらつきが見られるようになり、困りごと(問題)をより具体的に把握できるようになります。
問題の深堀り
より具体的な問題点が見えてきたら、更に層別→グラフ化→ばらつき確認(問題点の具体化)→層別→…の流れを繰り返していきます。
このテーマの困りごとを深堀していくことで、何が一番の問題なのかを明らかにすることができます。
解決したい特性を決める/QCテーマの問題の明確化
最後に、深堀によって分かった一番の問題点を5W1Hでまとめます。
これによって、最終的に解決すべき問題点が明確になり、解決すべき特性値を決めることができます。
特性値は、困りごとの深堀を誤らなければ問題点の5W1Hの構成要素に含まれているので、迷うことはありません。
まとめ
問題解決型QCストーリーの現状把握の進め方について解説しました。現状把握の目的を意識してデータを集めましょう。
そして、層別とグラフ化を繰り返して問題を深堀し、QCテーマの困りごとについて一番の問題点を明確化します。
重要なポイントは現状把握の前提であるテーマの困りごとが明確化されていることです。
ここが曖昧だと現状把握の調査で大きな時間的なロスが発生するので注意が必要です。
本記事がQC活動を進めるうえでの参考になれば幸いです。
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