「測定ってどういう意味?あと、測定と計測の言葉の使い分けかたもよくわかりません」
こういった疑問に答えます。
本記事の内容は以下の通り。
・測定とは【定義と意味】
・測定と計測の違い
・測定と検査の違い
この記事を書いている私は、製造業の技術職で、10年以上QCサークル活動に参加し、QCサークル活動の推進者としても長年携わってきました。
測定とは【定義と意味】
まずは、測定と計測、測定と検査の意味の違いを説明する前に、測定の定義を見てみましょう。
測定の定義【辞書】
三省堂 国語辞典
①器械などで量をはかって定めること。
②自然や社会の現象その他を、一定の基準に当てはめて数量で表すこと。
測定の定義【JIS規格】
JIS Z8103:2000
「ある量を、基準として用いる量と比較し、数値又は、符号を用いて表すこと」
このように、測定とは、対象物のある量(例えば重さ・長さ)を、定められた一定の基準と比較して数値として表すことを指します。
逆に言えば、定められた一定の基準がなければ、測定できないということです。
改めて考えてみると、わたしたちは、「これって、どのぐらいなんだろう?」と頭で考えた瞬間、何らかの基準と比較してその対象を把握しようとしますよね。一定の基準のない世の中を想像するほうが難しいでしょう。
直接測定と間接測定
また、測定を分けると直接測定と間接測定に分けることができます。
直接測定は、対象物の測定したいパラメータそのものを計測器で直接測定することです。例えば、紙の長さを測定するために、定規を使って長さを測定するというようなことです。
一方で、間接測定とは、対象物の測定したいパラメータを、直接測定することができないので、対象物のその他のパラメータを測定して、当初知りたかったパラメータを理論的に算出する方法のことです。
例えば、地球の大きさを測定したい!と言ってもそんなでかい定規はありません。紀元前、ギリシャ人の学者であったエラトステネスは、エジプトのシエネとアレクサンドリアの7.2°の緯度の差と、距離から地球の半径を求めることができました(近似的な値でしたが)。
これが間接測定です。直接的に地球の半径を測定ことができないので、2地点の太陽光の角度を測定し、理論的に地球の半径を算出しています。
さて、話をもとに戻し、次に測定と計測の違いについて説明していきます。
測定と計測の違い
測定と計測の意味の違いはわかりにくく曖昧です。これらの違いを理解するには定義を知ることが必要です。
そして、測定と計測の意味の違いや使い分けが良くわからなくなってしまう要因は以下の定義の混在です。
計測の定義【辞書】
三省堂 国語辞典
「ものさしや器械などを使ってはかること。」
計測の定義【JIS規格】
JIS Z 8103:2000
「特定の目的をもって、事物を量的にとらえるための方法・手段を考案し、実施し、その結果を用いて所期の目的を達成させること。」
辞書とJIS規格の計測の定義が全く違いますよね。これは計測の言葉の意味合いや、測定と計測の使い分けに混乱を与える要因となっています。
測定と計測の違い
では、本題に入ります。測定と計測の違いは何でしょうか?
結論から言うと、辞書的な意味においては、違いはありません。日常的には、使い分けの明確な線引きもなく、曖昧であり、その多くは慣習です。
一方で、日本工業規格での測定と計測の定義の違いは明確で、使い分けがされています。
「測定」は、単にある量を数値化するルーチン的な作業のことです。
「計測」は、ルーチン的な作業者領域の話ではなく、技術/開発での目的を達成させるための取り組みのことを指します。
測定と計測の違いが曖昧で混乱に繋がってしまうのは、「辞書(国語辞典)」「慣習」「日本工業規格」が世の中でごちゃ混ぜになっていることが原因だと考えます。
また、ネットでは、測定と計測の使い分けについて、実例を挙げて、無理やり解説しているものを見かけます。
測定と計測の定義の側面から見ると、それらの解説は間違っています。あくまで、それらの解説は、実例からの帰納的な推測に過ぎないので注意が必要です。
測定と計測のJIS規格の違い
JIS規格の測定と計測の違いについて、解説が不足しているので、もう少し詳しく見ていきましょう。
●測定
「ある量を、基準として用いる量と比較し、数値又は、符号を用いて表すこと」
●計測
「特定の目的をもって、事物を量的にとらえるための方法・手段を考案し、実施し、その結果を用いて所期の目的を達成させること。」
JIS規格によると、測定とは、「量を基準と比較して数値化する」という、作業的な意味合いです。もう少し踏み込んで言えば、特に頭を使う必要のない単なる作業と言えます。
例えば、家にある机のサイズを測定するときに、あなたは、いちいちどうやって机のサイズを測定すれば良いのかと試行錯誤することはないでしょう。単にメジャーで長さを測定すればよいだけです。このように、測定とは単なる作業です。
一方で、JIS規格の計測は、あるものをどうやって量的にとらえるにあたり、決まった方法や手段がないので、頭を使って考えて、アイディアを出す必要があります。
また、そのアイディアを実際に試して、あるものを量的にとらえることができるか検証します。このトライ&エラーを繰り返して、量的にとらえる目的を達成させるのです。
これって、明らかに測定のような単純作業とは異なり、研究や技術開発の領域の話ですよね。そう、測定と計測の意味合いは全く異なるのです。
測定と検査の違い
おまけで、測定と検査の違いについても簡単に触れます。
検査は測定して、規格に適合しているか判定することです。つまり、測定は検査をするための手段ということです。検査と測定は同じ意味ではありません。
検査の意味合いについては別の記事で詳しく解説しているので興味のある方はご覧ください。
まとめ
測定と計測の意味や使い分けの違いについて解説しました。
辞書や日本工業規格の定義や慣習がごちゃ混ぜになって世の中にでていることで、使い分けが良くわからない状態になっていると考えます。
まずは、それぞれの言葉の定義を押さえて足場を固めることが遠回りのようでそれぞれの意味合いを理解するうえでの近道です。本記事でしっかり基礎を押さえましょう。
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