「母集団と標本の違いを教えて下さい」
こういった疑問に答えます。
本記事の内容
・母集団と標本の違いとは?
・母集団とは?
・標本とは?
・サンプリングで考えるべきこと
この記事を書いている私は、製造業のエンジニアとして10年近く携わり、開発や品質保証、さらに製造スタッフなどを幅広い経験をしてきました。
本記事では母集団と標本の違いについて、初心者向けに解説します。
母集団と標本の違いとは?
母集団と標本は、サンプリング対象の全体(母集団)とその一部を抜き出したもの(標本)という関係性です。
例えば、ここに本が100冊あるとして(母集団)、そこから10冊抜いたものが標本/サンプルという関係です。
一般的な例としては、世論調査があります。
日本の人口、約1.3億人(母集団)から、ランダムに約2000人(標本/サンプル)を対象にアンケートを行います。
母集団も標本もなじみがない言葉でとっつきにくいですが、違いを理解するのは難しくないでしょう。
では、それぞれの用語について定義を見ていきましょう。
母集団とは?
JIS Z8101-1:2015の定義はこちら。
母集団
検討の対象となるアイテムの全体。
つまり、調査をして、これってどういうことなのかと、考える対象ということです。
特に、品質管理では、調査・考察し、何らかの処置をする対象であるということがポイントになります。
また、母集団には、対象となるアイテムが有限または無限な場合とで以下のように呼ばれ方が変わります。
・有限母集団
・無限母集団
これらの区別をするために頭に入れておきたいポイントは、
何を検討の対象とするのか?
何を処置の対象にするのか?
ということです。
ほぼ母集団の定義そのものですが。
例えば、検討の対象となるアイテムが、製造した1ロット(製品100個)であれば、その母集団は有限ですよね。なので、有限母集団と呼びます。
一方で、検討の対象となるアイテムが、その製品を連続的に製造している工程の場合どうでしょうか。
その工程は安定しているのか?工程に何かしら処置が必要か?
こういったことを判断したい場合です。
この場合、製品はひたすら製造されるわけで、先ほどの有限母集団の例のように有限として扱うことはできませんよね。
よってこの場合は、無限母集団と呼ばれます。
次に標本についてみていきましょう。
標本とは
標本というよりサンプルと呼んだほうがなじみ深いと思います。
JIS Z8101-1:2015の定義はこちら。
標本,サンプル,試料
一つ以上のサンプリング単位からなる母集団の部分集合。
以前のJIS Z8101-2:1999定義はこちら
母集団の情報を得るために、母集団からとられた一つ以上のサンプリング単位
ここでいうサンプリング単位とは、一つの場所から一度にとられたサンプルを構成するもので、製品、材料、サービスのひとまとまりのことです。
このように、母集団の情報を得ることが目的で、母集団の全体から部分的に抜き取ったものが標本/サンプルということです。
サンプルリングで考えるべきこと
サンプルの意味自体は単純ですが、より大事なことは母集団からサンプルを取ること、つまりサンプリングのほうです。
細かいポイントはたくさんありますが、最低限、サンプリング前に考えるべきことは2点です。
・何のためにサンプルをとるのか?(サンプリングの目的)
・そのサンプリングで本当に問題がないのか?(サンプリング方法)
この2点が明確でないと調査は完全に無意味になります。
そもそもサンプリングをすることは、採取したサンプルを調査して、得られた部分的な情報から、全体としての母集団を推定するためです。
そして、母集団に対して、何らかの処置を施すべきか、判断するためです。
この目的に沿ったサンプリングになっているか確認することが必要です。
これらの考え方は統計的な話が基礎です。
統計についてよくわからないという人は、完全な初心者向けとして以下の本が分かりやすいのでおすすめです。
とても読みやすく文系でも余裕で理解できます。興味のある方はどうぞ。
また、特に注意すべきことは、製品やサービスに対する専門的な知識がなければ、サンプリング方法を誤るということです。
基本はランダムサンプリングですが、本当にそれで大丈夫なのでしょうか?
ものづくりに従事している人ならわかりますが、現実はそんなにランダムサンプリングで片付けられるほど単純なものではないことが多かったりもします。
教科書的な知識で知ったかぶりをするのではなく、現場・現物・現実をよく知る有識者にサンプリング方法を相談することが必須です。
まとめ
母集団と標本の違いやそれぞれの定義について初心者向けに解説しました。
それぞれの用語の意味は分かりづらいですが、その目的を考えれば、関係性は明確です。
基礎は統計的な考え方なのでそちらを平行して勉強するのもおすすめです。
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